所有者不明土地問題
全国で土地の持ち主が不明だったり、共有者が沢山いて扱いに困る所有者不明土地が増えています。不明土地の面積は九州以上の広さがあると言われています。
ここでは所有者不明土地の問題点と今後の対策についてご紹介します。
所有者不明土地が増える原因
所有者不明土地ができる原因としては、登記簿や固定資産税課税台帳等、所有者がわかる台帳が最新でないことがあげられています。
不動産の所有者が変わった場合、名義変更登記をするのは義務ではないため、相続があった時に登記をせずに放置をしてしまうのが原因としてあげられます。
そのまま代替わりが進むと、親戚付き合いも無くなり、相続時点のことがわからなくなり、土地の所有者が誰なのかわからなくなります。
またわかった場合でも、多数の共有者に連絡を取るのは困難であるといえます。遺産分割を巡って争いになることもあります。こうして所有者が決められない状態が続き、登記ができずに放置されてしまうのです。
所有者不明土地の問題点
このように不完全な土地は買い手としても不安があるため、売却をすることができません。かといって管理不全のまま放置されるとゴミの不法投棄や、樹木の繁茂など治安、防災の面でも危険です。
このような所有者不明土地の増加により行政が公共事業を進めるのに支障が出ています。所有者を探すためにコストと時間がかかり、公共事業がストップしてしまうのです。
今後の政府の対応
このように活用のできない所有者不明土地の解消を目的として政府は民法、不動産登記法の見直しを考えています。
①相続登記の義務化等
現在より、もっと簡単に登記ができるよう方策を考えた上で、相続登記の義務化が検討されています。
他には、登記所が自ら死亡情報等を他の公共機関から取得し、登記の更新ができること が考えられています。
②土地所有権を放棄できるようにする
現在、土地所有権の放棄については民法に規定がありません。無償でもいいので土地を 手放したいと考えていても手放せないのが現状です。そこで放棄ができるよう、法整備が 検討されています。
③遺産分割協議に期間制限を設ける
現在、遺産分割協議には期間制限ありません。そのため協議が整わないと共有状態のま ま放置されてしまいます。現状を解消するため、期間の設定や、期間を過ぎた場合の法律 の効果が検討されています。
④民法の共有制度の見直し
共有地を利用するためには、共有者全員を探す必要があり、1人でも連絡が取れない場 合は、利用や処分ができません。そのため、連絡が取れる共有者の同意だけで土地を利用 できるように民法の一部改正が検討されています。
⑤不在者財産管理人制度の見直し
現在の財産管理制度は、不在者の土地だけの管理をすることはできず、全ての財産を管 理することが求められています。これを土地だけにつき管理人を選任できるように検討 がされています。
また、複数の共有者がいる土地は共有者1人につき1人の管理人を選任する必要があ るのですが、複数の共有者に1人の管理人が選任できるように検討がされています。
⑥隣地所有者による所有者不明土地の利用管理
現在では所有者不明土地は勝手に立ち入ることができないため、樹木やごみが大量に 発生して、隣地所有者に被害があったとしても対処することができません。
そこでこのような管理不全の土地を隣地所有者が管理できるように検討中です。
人口減少社会になり、資産である土地に対する意識が低下してきています。それに伴い、所有者不明土地は増加していて、このまま増えれば経済的損失は約6兆円にも及ぶと言われています。
複数の共有者がいる土地の1人に連絡が取れないことにより、公共事業を進めることができず、有用な土地活用の妨げとなっています。
このような新たな時代に対応した法整備が望まれるところです。